ゴキブリスーツ

カジュアルフライデーだの、オフィスカジュアルだのという言葉が死語となってしまったような気がするのは、それだけ会社でもカジュアルウェアが浸透したためかというとそうではない。いまやオフィス街はほとんど真っ黒に見える(昔はどぶねずみ色と言った)やや細身のみんな同じに見える安そう(?)なスーツ一色である。特にこの傾向は若者層に強いようで、黒に細いストライプとかのごく小さなバリエーションはあるようだが、細身の窮屈そうな真っ黒けのスーツ軍団は何かのユニホームか?と見まがうほどである。
 そこまでみんながみんな同じ服を着ているとむしろ不気味である。事実日本のオフィス街にやってきた外国人はほぼ例外なく気持ち悪いとの感想を述べる。私の感想も同じで、みんな同じ真っ黒スーツは気持ち悪いし、積極的に同種のこれを避けたくなる。ただし、日本人の同質性というか、群れたがる意識というか、同じ服を着ていれば安心という気持ちがどこかにあるのは否定できないという面はある。 しかしそれでもやっぱり最近の「みんなおんなじスーツ」の割合の高さは一昔前に比べても以上に高く、その真っ黒細身のおんなじ割合の高さゆえに眺めは不気味である。おまえらみんなショッカーの下っ端戦闘員かよ、と毒づきたくもなるくらいオフィスは異様な眺めである。
 私は職業柄スーツは多すぎるくらい持っているが、自発的に週に一度は非スーツの日を設けカジュアルで会社に出かけていく。実は今週は今日がそうなのであるが、既にすたれた「チョイ馬鹿オヤジ」にならないようにだけ気をつけているが、これは少数派である。
 何でオフィスカジュアルはすたれた?デパートや服飾販売店の戦略の変化か? 日本のメーカーの怠慢かあるいは分業があるのか? 
 疑問は数々あれど、真っ黒細身のゴキブリスーツぞろぞろの眺めが減少してほしい、せめてみんなはスーツの選択のバリエーションくらい増やしてほしいと思うワタクシではあった。